2008/04/01//Tue. 02:11
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いい。このノリ具合。肩の力の抜き様。まったくもって普通のジャズ、何の変哲もないハード・バップ。目玉である筈のトレーンも、下手でもなくバリバリ吹きまくって「シーツ・オブ・サウンズ」している訳でもない。ケニー・バレルも特に目立っているようには聴こえない。却ってフラナガンの方が裏方でいい味を出している。
逆に一人目立っているのがトランペットの Idrees Sulieman (読み方知らず)。やけに気張っている。といっても決して悪いわけじゃない。どちらかといえば地味なセッションにスパイスを効かせるようなアタックを仕掛けてくる。
そんな訳で特筆することなど何もないアルバムだが、なぜか心地よくていつの間にかノッている自分がいる。そういうアルバムって珍しいのではないか。
前言撤回。特筆することなど何もないのではなく、全てが特筆すべきなのかもしれない。1曲目、"Minor Mishap" のフラナガンを聴いていてそう感じた。細かく聴けば随所に現れる職人技。
なぜなんだろう?と疑問に思うと同時に「実質的にリーダーがいないからこそこのバランスの程よいアルバムが出来たんじゃないのか」という答えが自分の中で返ってくる。
しかし、名義が "Tommy Flanagan/John Coltrane/Kenny Burrell" ってどういうこっちゃ? 誰をリーダーにしたらいいかワカランから有名な3人を表に出しただけじゃなかろうか?
いや、批判ではない。結果的に良質なアルバムが出来上がればリーダーなんて誰だっていいのだ。
これだけ気軽に聴けて屁理屈こかずに楽しめるジャズのアルバムがあるというだけで感謝しなければ。ウーン、酒が欲しくなる(笑)
曲中、傑作が1曲だけある。"How Long Has This Been Goin On" 。他のメンバー抜きのピアノ・トリオで奏でられる唯一のスタンダード。フラナガンの弾く音のひとつひとつがキラ星のように光っている。時に明るく、時に仄かに。珠玉の1曲。
ここまで書いてきて気付いたが、"How Long Has This Been Goin On" 以外は全てフラナガンが曲を書いている。ということは彼がリーダー? だったらフラナガン名義にしろ!と言いたくなるがそこが商売というもの、恐らくフラナガンの名前だけではレコード会社も心もとなかったのだろう。結果的にトレーンとバレルの三人の共同名義になったというのが実情か。
結論。曲作り・演奏とも、このアルバムの主人公はトミー・フラナガンだ。
以上、色々御託を並べてみたがまずは騙されたと思って入手してみるといい。最初は良さが感じられないが、ジャズにしか持てない寛ぎ感と適度な緊張感を聴くほどに味わえるに違いない。
ジャズが好きなら一家に一枚、"The Cats" 。
1. Minor Mishap
2. How Long Has This Been Going On?
3. Eclypso
4. Solacium
5. Tommy's Time
Tommy Flanagan (p) John Coltrane (ts) Kenny Burrell (g)
Idrees Sulieman (tp) Doug Watkins (b) Louis Hayes (d)
Rudy Van Gelder Studio,
Hackensack, NJ, April 18, 1957
New Jazz 8217
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2008/03/26//Wed. 01:54
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自慢じゃないがピアノ・トリオは苦手だ。特に新録音・新盤のピアノ・トリオは数が多すぎてどれを選んだらいいのかわからなくなる。ピアノというのは基本的に音色が変わらないからピアニストの特徴がつかみ難いのだ。
苦手な理由はもうひとつある。行きつけのCD屋にはピアノ・トリオ・コーナーがある。単なるピアノ・トリオのコーナーではない。寺島康国氏が推薦する盤ばかりを集めているコーナーで、片隅に氏の本が2、3冊、参照用にぶら下がっている。そんなに寺島贔屓でいいのだろうか?という疑問が湧いてくる。
好感が持てるのは商品タグに一枚一枚にコメントを沿えてCDを陳列しているディスク・ユニオン新宿ジャズ館。以前はタグに説明なんてなにも書いていなかったのに、しばらく足を向けていない間に入ったのだろう見知らぬ店員が暇を見て決して綺麗とはいえない字で二言三言コメントを書き込んでいる。
フレッド・ハーシュ・トリオは全く知らなかった。件のジャズ館に入ったらこのCDがかかっていた。最初はありふれたビル・エヴァンス風の「オシャレな」ピアノ・トリオだろうと何気なく聴き流していたのだが、時間のたつうちに「おお、何だこれ?」と思い始めた。
クールで透明感があり時に叙情的なのだが、いつの間にかテンポが急激にアップしてエキサイティングになる。そうかと思うとまた静謐な雰囲気に戻り、はたまた前衛的な匂いのする曲を演奏し始める。しまいにはモンク風の演奏まで飛び出してきた。
気になったのでカウンターに行ってかかっているCDを見せてもらおうとしたところ、店員がコメントを書き込んでいる最中だった。「急激に変化するリズム、天才的ドラミング」。確かそう書いていた。ジャケットを手に取り曲目を見ると、「モンク風」と感じたのは間違いではなく実際に2曲、モンクの曲を演奏している。
面白いのはそこだけではない。"You And The Night And The Music" や "How Deep Is Ocean" といった有名なスタンダードがあるにもかかわらず、全く原曲を感じさせない演奏だったのだ。
メンバーの誰一人として知っていたわけではない。かといって大手のレコード会社が出しているものでもない。それでも買わせる何かがこの盤にはあった。
調べてわかったのだが、フレッド・ハーシュという人、新人ではなくかなりのベテランらしい。CDも何枚も出ている。にもかかわらず日本盤では出ていないようだ。恐らく上記の「寺島派」CDショップにも置いていないだろう。
こういう優れた盤があまり紹介されないというのはちょっと悲しい。それとも俺がジャズ誌を細かくチェックしていないからだろうか。その辺はよくわからんが。
話を演奏に戻そう。ベースは芯のあるしっかりした音でドラムと共に変幻自在のリズム感を見せる。ベース・ラインをおかずにしてメシが食えそうだ。ドラムはユニオンの店員が書いていたように天才的。スロー・テンポもブラシ・ワークもハードな演奏もお手のものといった感じで難なくこなす。中心のハースはさらに天才的だ。紡ぎ出す旋律がどこに向かうかわからない。そこがスリリングでたまらないのだ。彼の演奏に呼応するドラムとベースも尋常ではない。ピアノ、ベース、ドラム、どこに耳を向けても刺激的な音が流れてくる。できれば耳が3つ欲しいくらいだ。
聴けば聴くほど面白くなるアルバムだ。ジャズは今まで旧譜ばかり聴いていたが、近年のアルバムも捨てたものではないと感じると共に、もっともっとこのようなアルバムが紹介されてもいいのではないか、と思った。
最近ジャズに刺激を感じなくなった人、お薦めです。はい。
1. So In Love
2. Rhythm Spirit
3. Heartland
4. Galaxy Fragment / You and the Night and the Music
5. Boo Boo's Birthday
6. Change Partners
7. How Deep Is The Ocean
8. Gravity's Pull
9. Andrew John
10. Misterioso
Fred Hersch (p), Drew Gress (b), Nasheet Waits (ds)
Recorded December 4th and 5th, 2006
Palmetto Records PM 2124
【試聴サイト】
Palmetto Records
【Fred Hersch Web Site】
http://www.fredhersch.com/

2008/03/25//Tue. 22:50
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2003年リマスター盤の再発。廉価な1000円の旧盤
フォーレのレクイエムは名盤の誉れ高いクリュイタンス盤
やはりこのコルボ盤(72年録音)のボーイ・ソプラノとバリトン、そして指揮者コルボの弾くオルガンはどこまでも清らかで美しく、いつ聴いても心が洗われる。
旧盤
彼は92年にフォーレのレクイエムを再録音している。人によっては再録盤の方がいいと言う人もいるが、個人的にはこの72年録音の方がより敬虔な気持ちになれるのでどちらと問われればこちらを採る。
まさにフォーレのレクイエムの決定版と言えるだろう。

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