My Groove Your Move

〜偏愛的ディスクレビュー Ver.2〜


ジャズ、クラシック、ロック、ソウル、R&B。 ジャンルや新旧にとらわれず、おすすめ盤を紹介します。
2008/04/01//Tue. 02:11
The CatsThe Cats
Tommy Flanagan
John Coltrane
Kenny Burrell

Original Jazz Classics 1991-07-01
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 いい。このノリ具合。肩の力の抜き様。まったくもって普通のジャズ、何の変哲もないハード・バップ。目玉である筈のトレーンも、下手でもなくバリバリ吹きまくって「シーツ・オブ・サウンズ」している訳でもない。ケニー・バレルも特に目立っているようには聴こえない。却ってフラナガンの方が裏方でいい味を出している。

 逆に一人目立っているのがトランペットの Idrees Sulieman (読み方知らず)。やけに気張っている。といっても決して悪いわけじゃない。どちらかといえば地味なセッションにスパイスを効かせるようなアタックを仕掛けてくる。

 そんな訳で特筆することなど何もないアルバムだが、なぜか心地よくていつの間にかノッている自分がいる。そういうアルバムって珍しいのではないか。

 前言撤回。特筆することなど何もないのではなく、全てが特筆すべきなのかもしれない。1曲目、"Minor Mishap" のフラナガンを聴いていてそう感じた。細かく聴けば随所に現れる職人技。

 なぜなんだろう?と疑問に思うと同時に「実質的にリーダーがいないからこそこのバランスの程よいアルバムが出来たんじゃないのか」という答えが自分の中で返ってくる。

 しかし、名義が "Tommy Flanagan/John Coltrane/Kenny Burrell" ってどういうこっちゃ? 誰をリーダーにしたらいいかワカランから有名な3人を表に出しただけじゃなかろうか?

 いや、批判ではない。結果的に良質なアルバムが出来上がればリーダーなんて誰だっていいのだ。

 これだけ気軽に聴けて屁理屈こかずに楽しめるジャズのアルバムがあるというだけで感謝しなければ。ウーン、酒が欲しくなる(笑)

 曲中、傑作が1曲だけある。"How Long Has This Been Goin On" 。他のメンバー抜きのピアノ・トリオで奏でられる唯一のスタンダード。フラナガンの弾く音のひとつひとつがキラ星のように光っている。時に明るく、時に仄かに。珠玉の1曲。

 ここまで書いてきて気付いたが、"How Long Has This Been Goin On" 以外は全てフラナガンが曲を書いている。ということは彼がリーダー? だったらフラナガン名義にしろ!と言いたくなるがそこが商売というもの、恐らくフラナガンの名前だけではレコード会社も心もとなかったのだろう。結果的にトレーンとバレルの三人の共同名義になったというのが実情か。

 結論。曲作り・演奏とも、このアルバムの主人公はトミー・フラナガンだ。

 以上、色々御託を並べてみたがまずは騙されたと思って入手してみるといい。最初は良さが感じられないが、ジャズにしか持てない寛ぎ感と適度な緊張感を聴くほどに味わえるに違いない。

 ジャズが好きなら一家に一枚、"The Cats" 。

1. Minor Mishap
2. How Long Has This Been Going On?
3. Eclypso
4. Solacium
5. Tommy's Time

Tommy Flanagan (p) John Coltrane (ts) Kenny Burrell (g)
Idrees Sulieman (tp) Doug Watkins (b) Louis Hayes (d)
Rudy Van Gelder Studio,
Hackensack, NJ, April 18, 1957

New Jazz 8217

2008/03/26//Wed. 01:54
Night & the MusicNight & the Music
The Fred Hersch Trio

Palmetto 2007-05-01
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 自慢じゃないがピアノ・トリオは苦手だ。特に新録音・新盤のピアノ・トリオは数が多すぎてどれを選んだらいいのかわからなくなる。ピアノというのは基本的に音色が変わらないからピアニストの特徴がつかみ難いのだ。

 苦手な理由はもうひとつある。行きつけのCD屋にはピアノ・トリオ・コーナーがある。単なるピアノ・トリオのコーナーではない。寺島康国氏が推薦する盤ばかりを集めているコーナーで、片隅に氏の本が2、3冊、参照用にぶら下がっている。そんなに寺島贔屓でいいのだろうか?という疑問が湧いてくる。

 好感が持てるのは商品タグに一枚一枚にコメントを沿えてCDを陳列しているディスク・ユニオン新宿ジャズ館。以前はタグに説明なんてなにも書いていなかったのに、しばらく足を向けていない間に入ったのだろう見知らぬ店員が暇を見て決して綺麗とはいえない字で二言三言コメントを書き込んでいる。

 フレッド・ハーシュ・トリオは全く知らなかった。件のジャズ館に入ったらこのCDがかかっていた。最初はありふれたビル・エヴァンス風の「オシャレな」ピアノ・トリオだろうと何気なく聴き流していたのだが、時間のたつうちに「おお、何だこれ?」と思い始めた。

 クールで透明感があり時に叙情的なのだが、いつの間にかテンポが急激にアップしてエキサイティングになる。そうかと思うとまた静謐な雰囲気に戻り、はたまた前衛的な匂いのする曲を演奏し始める。しまいにはモンク風の演奏まで飛び出してきた。

 気になったのでカウンターに行ってかかっているCDを見せてもらおうとしたところ、店員がコメントを書き込んでいる最中だった。「急激に変化するリズム、天才的ドラミング」。確かそう書いていた。ジャケットを手に取り曲目を見ると、「モンク風」と感じたのは間違いではなく実際に2曲、モンクの曲を演奏している。

 面白いのはそこだけではない。"You And The Night And The Music" や "How Deep Is Ocean" といった有名なスタンダードがあるにもかかわらず、全く原曲を感じさせない演奏だったのだ。

 メンバーの誰一人として知っていたわけではない。かといって大手のレコード会社が出しているものでもない。それでも買わせる何かがこの盤にはあった。

 調べてわかったのだが、フレッド・ハーシュという人、新人ではなくかなりのベテランらしい。CDも何枚も出ている。にもかかわらず日本盤では出ていないようだ。恐らく上記の「寺島派」CDショップにも置いていないだろう。

 こういう優れた盤があまり紹介されないというのはちょっと悲しい。それとも俺がジャズ誌を細かくチェックしていないからだろうか。その辺はよくわからんが。

 話を演奏に戻そう。ベースは芯のあるしっかりした音でドラムと共に変幻自在のリズム感を見せる。ベース・ラインをおかずにしてメシが食えそうだ。ドラムはユニオンの店員が書いていたように天才的。スロー・テンポもブラシ・ワークもハードな演奏もお手のものといった感じで難なくこなす。中心のハースはさらに天才的だ。紡ぎ出す旋律がどこに向かうかわからない。そこがスリリングでたまらないのだ。彼の演奏に呼応するドラムとベースも尋常ではない。ピアノ、ベース、ドラム、どこに耳を向けても刺激的な音が流れてくる。できれば耳が3つ欲しいくらいだ。

 聴けば聴くほど面白くなるアルバムだ。ジャズは今まで旧譜ばかり聴いていたが、近年のアルバムも捨てたものではないと感じると共に、もっともっとこのようなアルバムが紹介されてもいいのではないか、と思った。

 最近ジャズに刺激を感じなくなった人、お薦めです。はい。

1. So In Love
2. Rhythm Spirit
3. Heartland
4. Galaxy Fragment / You and the Night and the Music
5. Boo Boo's Birthday
6. Change Partners
7. How Deep Is The Ocean
8. Gravity's Pull
9. Andrew John
10. Misterioso

Fred Hersch (p), Drew Gress (b), Nasheet Waits (ds)
Recorded December 4th and 5th, 2006
Palmetto Records PM 2124

【試聴サイト】
Palmetto Records

【Fred Hersch Web Site】
http://www.fredhersch.com/

2008/01/03//Thu. 00:03
 正月早々残念なことを知ってしまった。あのオスカー・ピーターソンが昨年亡くなっていたとのこと。なぜ今までわからなかったんだろう? なんたる不覚。ちょうど彼の音楽が好きになりかけていた所なので動揺している。これから仲良くなろうとしていた友達が何も言わず遠くに行ってしまったかのような寂しさを感じている。正月三箇日はディランの「プヒ〜〜」をトップにしておこうと思っていたのだが、ちょっとディランには我慢してもらってピーターソンの記事をしばらくトップに置くことにしよう。

 ジャズを聴くようになってもピーターソンはあまり好きではなかった。「バリバリと弾きまりテクニックでゴリ押しするピアニスト」というイメージがあったからだ。

 そんなイメージを覆してくれたのはインターネット・ラジオでかかっていた "Heartstrings" という曲だった。ミルト・ジャクソンとピーターソン・トリオとの共演アルバム "Very Tall" からの選曲。「バリバリ弾く」、「ゴリ押し」というイメージを一気に覆してくれる、静かで悲しげなバラード。

 ピーターソンの間を生かした音の隙間からレイ・ブラウンのアコギが効果的に流れ出すイントロから心奪われる。ミルト・ジャクソンの優しく奏でるメロディ、ピーターソンの穏やかなバッキング。だがよく聴いてみるとミルトはかなり早弾きしている。にもかかわらず全く性急さを感じさせないところは舌を巻いてしまう。そしてピーターソンのソロ。とても彼の演奏とは思えないほど非常にソフトなタッチで心とろけそうになる。この1曲だけでも "Very Tall" というアルバムは「買い」だ。

Very TallVery Tall
Oscar Peterson with Milt Jackson

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 全体としては静けさに満ちながらもスウィングする、冷たい炎のようなアルバムだ。このような上質なアルバムが日本盤になっておらず陽が当てられないというのは非常に残念だ。

 次はこのブログの「おすすめ商品」欄にも掲載している "Louis Armstrong Meets Oscar Peterson"だ。ジャケットは既に「おすすめ商品」欄に掲載しているので割愛する。

 "Very Tall" では共演のミルト・ジャクソンとほぼ対等の立場で演奏していたが、このアルバムではピーターソンはサッチモのバッキングに専念している。しかしこの心地よさはどうだろう。バックがしっかりしているからこそサッチモも肩の力を抜いてリラックスして歌えるのだろう。まるで鼻歌のような気楽さ。演奏は時にスウィンギー、時にブルージー、時にユルユル(笑)。特筆すべき曲はないのだが、流して聴くには最適なアルバムだ。

 ピーターソンのピアノをたっぷりと味わいたいのならクアドロマニア・シリーズの "Somebody Loves Me" がおすすめだ。4枚組で1000円前後、音質はそれなりだし代表曲というよりも古い録音を集めたものなのだが、「オスピーでおなかいっぱい」になりたいのなら最適では。メンバーもベースとのデュオやトリオ編成が大半を占めるし、「バリバリ弾きまくる」ピーターソンが堪能できる。曲目と演奏メンバーの詳細はこちらを参照されたし。

Somebody Loves MeSomebody Loves Me
Oscar Peterson

Quadromania
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 で、決定打はやはりこれでしょう。

We Get RequestsWe Get Requests
Oscar Peterson

Verve 1997-07-29
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 個人的には「名盤」アレルギーなので買うのを控えていたが、きっかけになったのはSonnyさんのメルマガ【おとうふジャズ】の「ベースが肝心」で紹介されていた YouTube動画 "You Look Good To Me"だ。この演奏シーンを見ているとピーターソンが余りにも楽しそうに演奏していて心がウキウキしてくる。しかもベーシストが二人登場する。レイ・ブラウンとニールス・ぺデルセン。ベーシストによってこんなにも音色と演奏方法が違うものなのかというのがよくわかる。しかしなんといっても、難しいことを考えずに聴いて・見て・スウィングして楽しめるというのが一番の魅力だろう。それもピーターソンが心から楽しんで演奏しているからなのだ。

 "You Look Good To Me" の元の演奏が収録されているのが、そう、上掲の "We Get Requests" 。いい。最高だ。理屈抜きに極上のジャズを心の底から楽しめる。とにかく一度、騙されたと思って聴いてみて欲しい。

 あらためてオスカー・ピーターソン氏のご冥福をお祈りいたします。

 
【参考記事】
bounce.com デイリーニュース
OSCAR PETERSON オフィシャル・サイト

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    Author:rollins1581
    通称: 「R」 または 「アール」

     好きな音楽を聴いているうちに様々なジャンルを聴いていることに気づきました。最近はジャズが中心ですが、かなり節操ありません(笑)。どちらかというと最近の音楽よりも昔の音楽が好みです(80年代以前)。HNはソニー・ロリンズの「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」からとりました。

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