2006/05/28//Sun. 21:24
![]() | Bird - O.S.T. (Repackaged) Charlie Parker Sony 2002-04-16 売り上げランキング : 366996 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ジャズを聴き始めた頃を思い出していた。一番良く聴いていたのが映画「バード」のサントラだったような気がする。
ジャズという音楽はナンダカンダ言ってもいろいろと難しい。まずハードルとして挙げられるのは楽器の聞き分けである。最初はサックスとトランペットの区別もつかなかった。だから、モノホンのジャズのアルバムを聴いてもちんぷんかんぷんなのである。
ちょうど映画「バード」が公開されたとき、映画館には行かなかったけれども、テレビでの紹介から流れてくる演奏シーンを見ていると「ジャズ」というものに対する憧れが湧いてきて、サントラを入手して良く聴いたものだ。このサントラが素晴らしいのは、バックのミュージシャンの演奏が新録音でサックスの音だけがチャーリー・パーカーその人の演奏を使用している、という点である。オリジナルのチャーリー・パーカーの音源だと音が古臭くてとても聴いていられなかった。このサントラを聴いていると本当に現代にバードが生き返って演奏しているような錯覚にとらわれる。
パーカーのオリジナル演奏を抜き出すというのは当時は画期的だったと思う。サントラの制作年度は1988年、どんな技術を使用してパーカーの音を抜き出したのかわからないし、今のテクノロジーであれば簡単にできるのかもしれないが、当時は「そんなことができるのか」という驚きがあった。
技術的な問題のせいかどうかわからないが、パーカーのサックスの音だけがちょっと「ひしゃげて」聴こえる。しかしそれが利点でもある。このサントラを聞き込んだおかげで、サックスの音と他の管楽器の音が明確に区別できるようになったし、なにより「パーカーの音」が体に染み込んで離れなくなった。後にモノホンのジャズのアルバムを沢山聴くことになったが、パーカーの音はあまり間違えず聞き分けられた。
後日映画を見たが内容はさっぱりわからなかった。主演のフォレスト・ウィテカーの扇情的な演技だけが印象に残っていた。つい最近DVDで再見したが、あまり楽しい映画とはいえなかった。パーカーの惨めな姿ばかりが切り取られているような気がする。バードはもっと楽しい奴だったと、ディジー・ガレスピーだったか誰だか忘れたが、パーカーと共演したことのあるミュージシャンが言っていたそうだ。
なので映画はあまりお薦めしない。もし見るのであれば、パーカーの人生とは切り離して独立した映画としてみたほうがいいと思う。ちなみにフォレスト・ウィテカーは「クライング・ゲーム」
そのウィテカーは「ローラ」の撮影中、音楽があまりにも美しく感極まって涙を流したそうだ。彼でなくても、「ローラ」の演奏には感極まるものがある。ひたすら美しい。この盤でのベスト・トラックだ。
「ローラ」のパーカーの演奏は所謂「ウィズ・ストリングス」ものであるのだが、オリジナルの演奏がどこに入っているのかずいぶんと探したものだ。ヴァーヴの「ウィズ・ストリングス」に入っている「ローラ」とは微妙にアドリブが異なっている。後日、たまたま購入したライノのベスト盤
![]() | Yardbird Suite: The Ultimate Charlie Parker Charlie Parker Rhino/WEA 1997-03-18 売り上げランキング : 248617 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この「バード」のサントラとライノのベスト盤
スポンサーサイト

2005/08/20//Sat. 22:04
それから「ジャズ・アレルギー」が治るまでは紆余曲折があるのだけれども、そんなことを書いていても皆さんの参考にはならないと思うので、ここはひとつ、入門書とお薦めのCDを紹介することにしてみたい。
まずは入門書から。
![]() | 超ジャズ入門 中山 康樹 集英社 2001-09 売り上げランキング : 45,269 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中山さんの本は賛否両論あって、アマゾンのレビューでもおすすめ度はばらばら。多分個性が強くて押し付けがましいからだろう。
しかし、なにも中山さんの言うとおりにしないとジャズを聴いてはいけないという訳ではない。中山さんは文章が巧みでなかなか面白く読ませてくれるので、ジャズ入門として機能しなくても単純にエッセイとして読めばいい。新書版だから持ち運ぶには便利だし、通勤途中の電車の中で読むにはもってこいだと思う。
「本を買うお金があったらCDを買う方がいい」という人は、このブログの続きを読んでくださいね(笑)。

2005/08/20//Sat. 21:58
ひとくちにジャズといっても、「オサレ」なジャズもあれば、しかめ面しながら聴くジャズもある。BGMに最適なジャズもあればBGMにはとうていなり得ないジャズもある。また聴く人によっても違う。サラッときければいいという人もいれば、どっぷりとジャズにはまりたいという人もいる。
そういう要求に全てこたえられるかどうかはわからない。また自分自身もまともにジャズを聴き始めてから5年くらいしか経っていないから、初心者のうちに入るのだろうけれども、多少なりとも参考になればと思い、傾向別に以下のようなセレクトをしてみた。10枚載せるので、気になったものがあったら是非聴いてみてください。
1. 「優雅でオサレでロマンチック」なジャズが聴きたい。
![]() | ムーンビームス ビル・エヴァンス ビクターエンタテインメント 2004-09-22 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一般的にはワルツ・フォー・デビイ
2. 激しく熱いジャズが聴きたい。
![]() | フォア&モア マイルス・デイヴィス ソニーミュージックエンタテインメント 2000-05-24 売り上げランキング : 40,494 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
是非これは聴いて欲しい。ジャズというのは優雅でロマンチックなものだけではないということを知らしめてくれる。トニー・ウィリアムスの信じられないドラミングとマイルスのぶち切れ度は何度聴いてもスリル満点。ぶっとびます。
3. とりあえず典型的なジャズが聴きたい。
![]() | ブルー・トレイン ジョン・コルトレーン 東芝EMI 2004-06-09 売り上げランキング : 372 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
時代によってジャズの「典型」も変わるけれど、50年代の所謂「モダン・ジャズ」「ハード・バップ」の典型として最適なのが「ブルー・トレイン」。ジャズがとっつき難いのは、管楽器が主体になることが多くて各楽器の音が聞き分けられない、というのが要因の一つになっていると思う。「ブルー・トレイン」はテナー・サックス、トランペット、トロンボーンと3つの管楽器が入っている。最初のうちはどれがサックスで、どれがトランペットなのかわからないかもしれないけれど、気軽にBGMとして流しているうちにだんだんわかってくると思う。「肩慣らし」ならぬ「耳慣らし」としてお薦め。
4. クラッシックのようなジャズが聴きたい。
![]() | ラスト・コンサート(完全盤) M.J.Q. イーストウエスト・ジャパン 1991-01-25 売り上げランキング : 8,916 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一聴するとクラッシックの室内楽のような雰囲気があるけれども、実は素晴らしい即興演奏を繰り広げていて、ジャズのエッセンスとはこんなものだと教えてくれる。解散コンサートで最上の演奏ができるなんて、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)はなんて素晴らしいグループだったんろうと思う。ジャズ界の遺産。出来の悪いジャズのCDを10枚聴くよりも、この「ラスト・コンサート」を真剣に10回聴いたほうが精神衛生上余程マシだ。
5. BGMでいい。
![]() | テイク・テン ポール・デスモンド BMGファンハウス 2005-06-22 売り上げランキング : 37,021 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
BGMで何が悪い。イージーリスニングで何が悪い。ポール・デズモンドの心地よさを知ったら、そんな第一印象なんてなんてどうでもよくなる。デズモンドのサックスとジム・ホールのギターが、ソフトかつクールでスリリングに絡み合う。良く聴いてみれば極上のジャズ。BGMにもなるけれど、聴けば聴くほど味わいが沸いてくる。それがポール・デズモンドの魅力だと思う。
6. クラブ・ジャズのノリに近いものが聴きたい。
![]() | レッテム・ロール(紙) ジョン・パットン ボビー・ハッチャーソン グラント・グリーン 東芝EMI 2003-12-26 売り上げランキング : 84,636 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
洗練されていてなおかつダンサブルな味わいのブルー・ノート盤。グラント・グリーン(ギタリスト)参加のアルバムは濃厚な雰囲気のものが多いけれども、これはある意味「オサレ」だ。ボッサ風の「いそしぎ」がいい味を出している。オルガン・ジャズとしても一級品。
7. 「スウィング・ガールズ」でやっていたようなビッグ・バンドが聴いてみたい。
![]() | ハイ・ファイ・エリントン・アップタウン+1 デューク・エリントン ソニーミュージックエンタテインメント 1997-03-01 売り上げランキング : 99,148 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「スウィング・ガールズ」で流れていた曲のうち、この盤には「A列車で行こう」が入っている。エリントンは何度も「A列車で行こう」を録音しているけれど、この盤のバージョンが最上の出来。ビッグ・バンド演奏の楽しさが思い切り味わえる。イントロでのエリントン自身のピアノ演奏が意外と聞き物。ローリング・ストーンズが81年の全米ツアー
8. ジャズ・ボーカルを聴いてみたい。
![]() | レディ・デイの肖像 ビリー・ホリデイ ソニーミュージックエンタテインメント 1994-03-21 売り上げランキング : 117,399 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ジャズ・ボーカルでいつも聴いているのはビリー・ホリデイ。他の人はあまり聴いたことがない。ただ単にこの盤で満足しているという理由だ。いつもレイジーな雰囲気に浸りたいときに聴いている。"The Man I Love" なんて実にいい節回しで「こんな曲だったっけ?」と思って解説を見たら、原曲とは全く違うフレーズで歌っているらしい。レスター・ヤングのサックスも実にレイジー。この盤が入手しにくければ、収録曲数や曲順は違うけれども、輸入盤で Lady Day: The Best of Billie Holiday
9. ジャズで幸福な気分に浸りたい。
![]() | アート・テイタム~ベン・ウェブスター・クァルテット+3 アート・テイタム ベン・ウェブスター ビクターエンタテインメント 2004-09-22 売り上げランキング : 11,519 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
これはブログ仲間のMonk's Musicさんに教えてもらって最近好きになった。アート・テイタムは初めて聴いたのだが、なんて豊穣な音楽を奏でるんだろうと思った。音楽で人を癒すということがどういうことなのかを熟知している。ベン・ウェブスターも同様。いい歳をしたオッサン二人が泣いている子供をあやしているかのよう。
10. これだけは外せません。
![]() | ヴィレッジ・ヴァンガードの夜 ソニー・ロリンズ 東芝EMI 2004-06-09 売り上げランキング : 3,308 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
独断と偏見で言わせてもらえれば、ソニー・ロリンズの最高傑作。ジャズの興奮を味わうという点においては、ヒョーロンカさん達がこぞって名盤と唱えるサキソフォン・コロッサス
とまあ、随分と長くなってしまったけれど、最後まで読んで頂いた皆さん、どうもありがとうございます。是非参考にしてみてください。

| ホーム |
