2006/12/31//Sun. 05:56
いい。物凄くいい。正直言ってこんなにいいとは思っていなかった。ひょっとしたら80年代以降のアルバム中ベストではないか、と思わせるほどの出来である。もっとも、管理人は恥ずかしながらロリンズの最近作というのは齧るほどしか聴いていないから断言はできないけれども、アルバムとしてとても聴きやすく、なおかつロリンズの演奏が76歳とは思えないほどの精気に満ち溢れているからである。
全7曲のうちロリンズ作は4曲。それらにスタンダードを交互に配置して聴かせる構成である。昨年の来日公演時に演奏された曲がかなり入っている(もしかしたら全てかもしれない)。従って公演に足を運んだ人はきっとロリンズのステージでの姿が自然と脳裏に浮かんでくるに違いない。
まずアルバム・タイトルにもなっている1曲目「ソニー・プリーズ」。東京公演でもオープニングを飾っていた筈だ。最初から最後までワン・コードで進行するアップテンポの曲。これが実に格好いい! 単一コード進行というだけでもソロ演奏をするのは難しい筈だが、ロリンズは軽々と演奏してみせる。しかもフレーズがフリーキーで挑戦的なのだ。じわじわと熱くなるファンク的なノリも感じられる。尖っていて素晴らしい。
こういう曲をアルバム冒頭に置くということ自体、ロリンズにはかなり自信があるのだろう。この人の調子って年齢に反比例するのかね?
2曲目は一転してバラードの「サムデイ・アイル・ファインド・ユー」。サビの部分ではロリンズの歌心にクリフトン・アンダーソンがのほほんとしたトロンボーン演奏で彩りを添える。アンダーソン、いい味出してます。ボビー・ブルームも落ち着いたソロを聴かせてくれる。バラード演奏としては標準的な出来栄え。
次の「ニシ」という曲名は日本人の名前からとったそうだ。公式HPの"Making of Sonny, Please" というビデオでは、"Jazz Educator and Promoter" という解説がなされていた。
曲自体はミドル~アップ・テンポで軽快な曲調。ロリンズの速吹きとロング・トーンが楽しめる。速吹きはやはりちょっとレベルが落ちているかなという感じは否めないが、まあ、その辺は目を瞑りましょう(笑)。ただ、ロング・トーンはかなり凄いです。はい。
4曲目の「ステアウェイ・トゥー・ザ・スターズ」は2曲目のバラードと同じ雰囲気なのだが、パワーが増している。「これぞロリンズのバラード演奏」という感じで圧倒的というしかない。ブルームとアンダーソンのソロが途中に入るのだが、これが聴いている側にはいい休憩タイムとなっている(笑)。そのままロリンズに演奏させていたら聴いているこちら側が失神するに違いない。
ロリンズのソロ・フレーズの素晴らしさと伝わってくるパワーとのバランスがうまく取れていて、すっきりと整っている。そういう点から考えるとこの曲の演奏がアルバム中ベストだと思う。先ほどは「休憩タイム」だなどと失礼なことを書いてしまったが、良く聴いてみるとアンダーソンのソロもメロディアスでキラリと光っている。
5曲目の「リメンバリング・トミー」は恐らくトミー・フラナガンに捧げられた曲なのだろう。ミドル・テンポで覚えやすいメロディーだ。ロリンズの作曲能力が衰えていないことを証明してくれる。まったりとした雰囲気でリラックスできる曲と演奏。
さて、問題は次の「セレナーデ」だ。バラード演奏なのだが、「ステアウェイ・トゥー・ザ・スターズ」よりもさらに輪をかけてパワーが増している。しかも演奏時間8分16秒の間、ずっとロリンズは吹きっぱなしなのだ。つまりソロ演奏はロリンズのみ。ワタシ、もう開いたクチがふさがりません。ここまでくるともう、フレーズがどうのこうの言うレベルではない。ヨダレをたらしたままロリンズの音を全身で浴びるしかないのだ。これ以上の幸福が一体どこにあるのだろうか?
最後はロリンズお得意のカリプソ調「パーク・パレス・パレード」。ゆったりとした曲調なので、前曲でたらしたヨダレを拭く余裕がやっとできた(笑)。カリプソのリズムに揺られながら、夢見心地でアルバムが終わる。
結論。「ソニー・プリーズ」は刺激的かつ聴きやすく、完成度が非常に高い。なおかつソニー・ロリンズの「今」の勢いを肌で感じ取ることができる名アルバムだ。ロリンズが多少なりとも好きであれば買う価値は充分にある。また去年の日本公演を見に行った人は、このアルバムを聴くことであの感動をもう一度味わえるだろう。
しかしソニー・ロリンズという人、どこまで「ヤル気」なんだろうか。このアルバム自体、当初はWEBサイトのみの限定発売、しかも "Doxy Records" というレーベルを新規に立ち上げての発売である。2007年はアメリカ国内はもちろんヨーロッパでのツアーも決まっている。これで76歳。ヤル気満々ですな。できればもう一度日本に来て欲しい!
多分この記事が2006年の最後のレビューになるだろうけれども、こんなナイス・アルバムのレビューで一年を締めくくることができるなんて、しかもそれが他でもない、大好きなソニー・ロリンズのアルバムだなんて、俺はなんて幸せ者なんだろう。ああ、生きててよかった......
1. Sonny, Please (Rollins)
2. Someday I'll Find You
3. Nishi (Rollins)
4. Stairway to the Stars
5. Remembering Tommy (Rollins)
6. Serenade
7. Park Palace Parade (Rolllins)
Sonny Rollins (ts), Clifton Anderson (tb)
Bobby Broom (g), Bob Cranshaw (b)
Steve Jordan (ds), Kimati Dinizulu (per)
Joe Corsello (ds on Tr.6)
【試聴サイトその1】
【試聴サイトその2】
【注】
「ソニー・ロリンズ全アルバム・レビュー」は基本的には時系列に沿って行っておりますが、今回は新アルバム発売に伴い例外としました。
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レビューを拝読して、ドキドキしてきました。やはり、いいんですね。一刻も早く聴きたい。しかも、またやってくれたんですね、延々のソロを…。
正直なところ、私は、これが最後のアルバムになるのでは、と思っていたのですが、
ロリンズには、どんどん裏切ってもらいたいですね。
大晦日に「生きててよかった」と書かれたレビューを拝見できて、とてもうれしくなりました。
しゅう
URL 2006/12/31//Sun. 08:30
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このアルバム、レコード屋で見かけました。
やっぱりこれが最新作だったんですね。
ロリンズはまだ手を出していないので、いきなり最新作から、ってのも良いかもしれませんね。
rollinsさんのレビューを読んでそう思いました。
という訳で、たいへんお世話になりました。
来年も引き続きよろしくお願いします!
piouhgd
URL 2006/12/31//Sun. 11:35
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しゅうさんへ
今回のアルバム、とてもいいです。でも、最後のアルバムには絶対になってほしくないですね。
これからも宜しくお願いします。
piouhgdさんへ
>いきなり最新作から、ってのも良いかもしれませんね。
ああ、そういう手もありましたね(笑)新鮮なうちにお召し上がりください(笑)
50年代のロリンズであれば、ブルーノートのVOL.2がおすすめです。
ユニークな曲が多くモンクも2曲に参加しているので、piouhgdさんには
合いそうな気がするんです。もちろん、他の作品もいいのですが(笑)。
こちらこそ今年は大変お世話になりました。
来年も宜しくお願いします!
rollins1581
URL 2006/12/31//Sun. 18:07
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こんばんは、rollins1581さん。
そうですか、やっぱり良かったですか。
頑張って日本盤を買いましょうかね。
とか言いながらやっぱりアメリカ盤の発売を待っていたりして。
いずれにしても楽しみがひとつ増えました。
いいお年玉になりそうです。
Sonny
URL 2006/12/31//Sun. 23:31
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Sonnyさんへ
>そうですか、やっぱり良かったですか。
良かったです!これほどとは思いませんでした。
>いいお年玉になりそうです。
そうですね。格別のお年玉になりそうですね~(笑)
rollins1581
URL 2007/01/01//Mon. 00:00
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初めまして。こんにちは。いつも、拝見しております。丁寧で読みやすい解説。音楽が好きだという気持ちが伝わってくる感じで、本当にとても気持ちの良いブログですね。
このロリンズのアルバムの「ニシ」という曲ですが、この「ニシ」とは、関西を拠点に活躍するベーシスト、西山満さんのことだそうです。そうですか、教育者兼、プロモーターとしても紹介されているのですね。
いつも、遊びに来ています(恥ずかしいのでコメントは、できないけれど)。これからも、お邪魔します。今後もよろしくお願いします。
iYana URL 2007/01/16//Tue. 14:30
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iYanaさんへ
はじめまして。お褒めの言葉ありがとうございます。管理人としては一番励みになります!
「ニシ」さんはベーシストでもあったんですね。知りませんでした。
コメントは、恥ずかしいなどとおっしゃらずどんどん書き込んでいただけると嬉しいです!
相変わらず更新がスローなブログですが、今後とも宜しくお願いいたします。
rollins1581
URL 2007/01/16//Tue. 20:51
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rollins1581さん、こんばんは。
遅ればせながら、やっとこさ本作を手に入れました。結局米盤の発売まで待ちました。
いやぁ、本当に素晴しい作品ですね。私の筆力では記事になりませんでした。素晴しい。
Sonny
URL 2007/02/05//Mon. 21:37
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Sonnyさん、こんばんは。
早速伺います!
rollins1581
URL 2007/02/06//Tue. 22:25
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こんばんは。
遅ればせながら、このアルバムから行ってみました。
80近くにもなってこんなにも吹けるものなんでしょうか。
驚きますよね。
来日が楽しみです。
piouhgd
URL 2008/04/01//Tue. 22:21
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piouhgdさんへ
こんばんは。
このアルバムから行くという選択は割といいチョイスだったかもしれませんね。来日も近いことですし。
これからそちらに伺います!
rollins1581
URL 2008/04/03//Thu. 20:10
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