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2007/05/14//Mon. 00:04
ソニー・ロリンズ全アルバム・レビュー第25回 "Jazz In 3/4 Time Featuring Max Roach" (1956-1957) サイドマンとしての参加も含めたソニー・ロリンズの全アルバムをレビューするこのコーナー、遅々として進んでいなかったが、とりあえず今日から再始動。ジャンジャン・バリバリという訳にはいかないけれども、月1、2回くらいのペースを目標に再開したいと思います。 さて今回はマックス・ローチ名義の「ジャズ・イン・3/4タイム」。現在このアルバムのCDは3種類存在しているようだ。 A.7曲入り日本盤(ステレオ4曲、モノラル3曲) B.6曲入り欧州盤(全曲モノラル) C.6曲入り米国盤(ステレオか否か不明) このうち、C.の米国盤についてはヴァーヴのカタログ とCD Universe のページ に記載されているのみで、都内の大手CDショップで見かけたことがない。店頭にある輸入盤はどこに行ってもB.の欧州盤で、品番(0602498617663)も米国盤(B000202102)とは異なっている。またCD Universe のページ には「Stereo」の表記があるが何かの間違いだろう。後述するステレオ盤とモノラル盤の相違を読んで頂ければ分かるはずだ。 一番不思議なのがアマゾンのページ で、不思議というか単なる間違いだとは思うが、「from US」という記載があるにも拘らず、曲数が日本盤と同じ7曲になっている。本家ヴァーヴのページ でも6曲として紹介されているのにどういうこっちゃ。 ちなみにアマゾンで「from US」と記載されているのは「米国盤」という意味ではなく「米国から取り寄せますよ」という意味である、ということを耳にしたことがある。ホンマかいな。というか、ASINだけじゃなくて品番も書いておけと言いたくなる。曲目表記の正誤が判別できないじゃないか。その点HMV はエライ。ちゃんと品番(カタログNo)も発売国も書いてあるし「デジパック」という表記もなされている。しかも試聴可能ときた。品番は一部分しか書いていないけれども、まあこれだけ情報がしっかりしていれば不満はない。 という訳で存在すらあやしいC.の米国盤はレビュー対象外としよう。 で、A.日本盤とB.欧州盤の違いだが、これはオリジナル発売当初のモノラル盤とステレオ盤の違いに起因しているようだ。日本盤に付された大村幸則さんのライナー・ノーツから抜粋してみよう。 (モノラル盤とステレオ盤について) 「なお、『ジャズ・イン・3/4タイム』というタイトルのアルバムは最初MG36108という規格番号のモノラル盤でリリースされ、そこには〈ラヴァー〉のステレオ・バージョン(中身については後述)を除く6曲が収められていた。後に登場したステレオ盤(SR80002)は、〈ラヴァー〉のステレオ・バージョンのほか〈ヴァルス・ホット〉、〈アイル・テイク・ロマンス〉、〈リトル・フォークス〉を収録したもので、このCDは、ステレオ盤を基に、モノラル・テイクしか存在しない〈ブルース・ワルツ〉と〈美しき乙女〉も加えた完全版となっている。」 (「ラヴァー」について) 「当初はモノラル盤とステレオ盤とは異なるテイクだとされていたが、実は同じ演奏。最初にリリースされたモノラル盤では、ホーン・アンサンブルとドラムによるエクスチェンジ・パートのファースト・コーラスがカットされており、曲数の少ないステレオ盤では、そのカットしたところを復元して収録していたのだ。」 ふう、ややっこしい。 なぜこれだけしつこく解説しているかというと、日本盤(ステレオ・バージョン)よりも欧州盤(モノラル・バージョン)の方がはるかに聴き応えがあるからだ。例えば「ヴァルス・ホット」。ロリンズのサックスの音はモノラルだとぶっとく響いて気持ちいいのにステレオだと蚊が鳴くような耳障りな音に聴こえる。ピアノが右側、ロリンズとドーハムが左側のチャンネルに振り分けられているせいもあるかもしれない。で、この位置は次曲の「アイ・テイク・ロマンス」になると逆になる。なんだかなぁ。中央に定位するベースの音も拡散してしまっているようで聴き取りにくいし。こんなステレオ・バージョンは不要だ。 なので「ジャズ・イン・3/4タイム」をこれから買おうとする人は全曲モノラルで統一された欧州盤を是非とも入手して欲しい。目印はジャケ裏 右下の「Made in E.U.」という表記とCD品番。 品番は長くて覚えられそうにないけれど、「アルファベットなし13桁」とだけ覚えれば充分だと思う。
=============================================== さて肝心の内容だが、マックス・ローチ名義のアルバムの中ではもとても聴きやすく愛らしいアルバムだ。「全曲をワルツで通した画期的なアルバム」ということばかりが言われるけれども、それだけではなくメンバー全員が楽しそうに歌っているところがこのアルバムの一番の魅力なのだ。 例えば「ソニー・ロリンズ・プラス・フォー」でも取り上げられていた「ヴァルス・ホット」。ビル・ウォレスのピアノの可愛らしいイントロに続いて若干早めのテンポで演奏が開始される。ロリンズとドーハムの息のあったテーマが終わると、最初のソロは作曲者のロリンズ。「プラス・フォー」ではとても優しかったロリンズだが、ここではザクザクと切り込むようにソロを展開していく。ワルツという「ほんわか」としたテンポには合わないように思われるかもしれないが、これが不思議とマッチしているんですなぁ。まさに天衣無縫のソロ。素晴らしい。 次はドーハム。この人はやっぱり「ハード・バッパー」なんだなぁと思わせるような、良くも悪くも保守的でメロディアスでそこに哀愁感というスパイスを散りまぶした演奏。ドーハム・ファンにはたまりませんなぁ。 この曲でロリンズとドーハムのソロを比べると両者の違いがよく分かる。ロリンズは歌う時には歌うしメロディアスになるときもあるけれど、そうでないときはそうでなく自由自在にソロを展開してそれでも聴き入ってしまうような吹き方をするんだなぁ(なんのこっちゃ。何が「よく分かる」だ)。 ビル・ウォレスのピアノ・ソロはとても面白い。右手がコード進行から外れるような展開を見せるけれども、いつの間にかコード進行に合うような演奏に戻っている。そうかと思えばまるで二人で弾いているかのように右手と左手でソロを交換し合うような個所もあったりする。他の曲(「アイル・テイク・ロマンス」、「ラヴァー」)では両手で同じ音程を何オクターブか離して演奏する所がある。奇を衒っているのだろうか。面白いピアニストだね。 次のジョージ・モロウのベース・ソロは素晴らしい。これこそ「歌うベース」だ。全くケチの付け様がない。何度聴いても心地良いソロ演奏。 御大マックス・ローチのドラム・ソロは例によって約3分間と長大で、個人的には聴くのがつらいはずなのだが不思議と聴けてしまう。バシャバシャと叩きまくるその裏でずっとワルツのテンポをキープし続けているからだろう(他の曲でも同様)。プロのドラマーならこれ位のことは当然なのかな? マックス・ローチの技術的な正確さを認識させられた。 「アイル・テイク・ロマンス」もビル・ウォレスのピアノ・イントロが愛らしい。後ろでアルコを弾くモロウがウォレスをうまく引き立てている。 次の展開が最高だ。ドーハムのテーマ演奏、そのバッキングをしながらソロに滑り込むロリンズ、入れ替わるようにソロを継ぐドーハム、再びロリンズのソロ。彼らのコンビネーションとそれぞれのソロ演奏は何度聴いても痺れてしまう。ロリンズも高らかに歌っていて魅力的なのだが、ドーハムの紡ぎ出すメロディとトランペットの音色の美しさといったら筆舌に尽くしがたい。この曲での二人の演奏はアルバム中の白眉だと思う。 ウォレスのピアノ・ソロは上述のとおりだが、曲の締めくくりのアレンジは彼が行ったそうだ。これがまた可愛らしいのね。ウォレスさん、なかなかやりますな。 ラストの「ザ・モースト・ビューティフル・ガール・イン・ザ・ワールド」のみピアノがウォレスからレイ・ブライアントに入れ替わる。この曲のみ56年録音(他は57年録音)。どこかで聴いたことがあるメロディだと思ったら、「テナー・マッドネス」でもラストを飾っていた曲じゃないか。両バージョンとも甲乙つけがたい出来だけれども、スローなテンポでしっとりと聴かせるこのアルバムのバージョンも素敵だ。ロリンズも心なしかまろやかなソロを聴かせる。ドーハムはちょっと気が抜けたようなソロだが、代りにブライアントが流麗で透き通るような演奏を聴かせてくれる。アルバムの締めくくりにはもってこいですな。 全体的には、ロリンズとドーハムのコンビネーションの素晴らしさと、ビリー・ウォレスのピアノの奇妙な味わいが最大の聴き物。全曲いい演奏なのだが、両方一度に味わえる「アイル・テイク・ロマンス」だけでもいいから是非とも聴いてほしい。 1. Blues Waltz 2. Valse Hot 3. I'll Take Romance 4. Little Folks 5. Lover 6. The Most Beautiful Girl in the World Tracks 1-5: Max Roach (d) Kenny Dorham (tp) Sonny Rollins (ts) Billy Wallace (p) George Morrow (b) Recorded March 1957 at Capitol Studios, Hollywood: tracks 1 and 3 on March 18; tracks 2 and 4 on March 20; track 5 on March 21 Track 6: Ray Bryant (p) replaces Billy Wallace Recorded September 19, 1956 in New York City 【注】 上記の曲目データは欧州盤(0602498617663)に基づきます。
こんにちわ。
このアルバムは聴いた事が無いので内容に関しては触れる事が出来ません(笑)。ごめんなさい。でも何か楽しそうな演奏のようですね。個人的には、ピアニストの遊びもドラム・ソロも嫌いじゃないのでイケるかな。
アルバムと言う物が、演奏した物をただプレスしただけの物では無いと言う事がよくわかる記事だと思いました。
「一発取りならLiveとスタジオじゃノリが違うだけ?」と言う考えが払拭されますね。えっ?そんな事考えている奴ぁ居ない?(笑)
falso URL 2007/05/14//Mon. 12:25
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falsoさん、こんばんは!
ダラダラとした長い文章にお付き合いいただきありがとうございます。
このアルバムは割といいですよ。機会があったら、是非。
>アルバムと言う物が、演奏した物をただプレスしただけの物では無いと言う事
音の違いのことでしょうか。難しいですよね、作り手としては。
ステレオ・モノラルの区別のみならず、ミックスによっては全然
違う曲に聴こえてきますし。
「ペット・サウンズ」は何度も聴いたアルバムですが、
ステレオ・バージョンにはちょっと違和感を覚えます。
決して私はモノラル至上主義というわけではないのですが。
>えっ?そんな事考えている奴ぁ居ない?(笑)
いや、私も同じようなことを時折考えますよ〜(笑)
rollins1581
URL 2007/05/14//Mon. 23:26
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falsoさん同様、このアルバムのないように触れる事はできませんが。(笑)
モノラルとステレオ、というと以前にVelvet Undergraundのあの有名なファーストアルバムを買ったとき、ステレオとモノラルがカップリングされていたのですが、あくまでも漠然と、ではありますがモノラルの方が良いかなと感じた憶えがあります。
やっぱり録音された時に近い状態のまま聴くのが良いのかもしれませんね。
それにしてもよくここまで調べ上げたなあと感心いたします。(笑)
それと例の件、ありがとうございます。
左のメールフォームから送ってみたんですけど、不安だったもので、念のため。
piouhgd
URL 2007/05/15//Tue. 09:57
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piouhgdさんへ
>モノラルの方が良いかなと感じた憶えがあります。
出始めたばかりの頃のステレオって、いいものは少ないですよね。
あと、ビートルズ・ファンにはモノラル好きが多いみたいです。
ブートでモノラル・ミックスのCDが出てたり、レコードの
モノラル盤に関してはジャズ・ファンよりもビートルズ・ファンの
方が実は詳しかったり。
>やっぱり録音された時に近い状態のまま聴くのが良いのかもしれませんね。
同感です。モノラルを主目的に録音されたのならモノラルで、
ステレオを主目的に録音されたのならステレオで聞きたいですね。
>それにしてもよくここまで調べ上げたなあと感心いたします。(笑)
ネットで公になっているデータがバラバラなので腹が立ったんです(笑)。
徹底的にやるなら米国盤CDもオリジナルのレコードも集めるべき
なんでしょうけど、ロリンズの単独アルバムではないのでここまでに
しておきました(笑)。
>例の件、ありがとうございます。
どういたしまして!メールはちゃんと届いてますよ。
また後でメールします!
rollins1581
URL 2007/05/16//Wed. 00:34
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この記事と、アルバムを見て思わず唾をゴックンと飲み込んで、必死でオリジを探しました。凄くついてて、そう時間を掛ける事無く見つかりました。しかも、大ドラマー付の奴で、ピカピカでした。
中身は、仰せの通り!!
ロリンズ様も、ドーハムもみんな最高です。このご説明をじっくり読んで聴くのと、そうでなくいきなり聴くのではかなり違う気がしました。もう何もかも納得済みで聴いたように、嬉しいばかりです。
ちなみに、私はモノラル党ですので、そのまま聴いてSTも聴いてみたいとまでは、まだ行かないのですが、色々と知りたくなって来ました。
いや、本当にいつも素敵なご示唆、ご案内感謝します。とても、嬉しい気分で、何回でも聴き直せます。
newks URL 2007/05/21//Mon. 21:00
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